第12回 第4部 事例
4.4 顧客志向のものづくりを可能にする技術チェーンを捉える

 高技術化が進む現在、製造ビジネスの兵站線は延び続けている。その兵站線を捉え
る仕組みが必要だ。
従来型の部品表は部品構成を表現する。したがって、「もの」のサプライチェーンを表現していることになる。これでは全く不足だ。
 トヨタの工程部品表は異質だ。部品構成だけでなく、品目名と工程名を組み合わせて、能力のチェーンも表現している。しかし、能力の表現としてはまだ足りない。どのような技能者や設備がどれだけ必要か、を十分には表現できない。
 貧者ら(MASP)は加工技術と技能を捉えることが基本であると考える。さらにプロセスとその多様性を表現する必要がある。
 現在の工業製品は構造が複雑になり、「再帰的構造」を持っている。顧客要望を満たすために多仕様化すると、仕様当たりの生産量が少なくなり、保有する生産能力の使用予定にムラと無駄が生じる。多仕様化した製品(仕様未定を含む)の共通事項を統合管理し、個別事項を個別管理する仕組みが必要だ。共通事項をまとめて調達(生産or購入)するなら、量産効果が生まれる。仕様当たりの生産量が少なくても、価格競争力をある程度維持できる。
 このような理由により、筆者らは多様性を上手に採り扱う「統合工程部品表」とその管理エンジン“FBOM”を開発した。
 多仕様化した住宅設備事業では部品表データ量が大幅に減少し、(1/100~1/1,000、良いケースでは  1/10,000)供給計画が短時間で済むようになった。
 高技術化と競争が激しい現在では多仕様製品のチェーンを上手に表現する必要がある。

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第11回 第4部 事例 生産情報システムの簡素化
        4.3 日本固有の生産方式「Seiban」

個別受注生産と規格品大量生産の狭間で「もの」(加工対象物)の確保が欠かせない。現在の工業製品高度化し、複雑化しているので、サプライチェーン全体にまたがるモジュールや部品、原材料の供給を計画しなければならない。
 ところが、計画し、調達手配(生産or購入)しても、急ぎの製品生産オーダ―に横取りされる恐れがある。この問題を避けるために、日本では製品生産オーダに紐付けして調達手配する「製番管理方式」を採用して来た。トヨタの号口管理もその一種だ。
 ところが、1970年代にIBM社が日本に紹介したMRPシステム(現在の製造ERPパッケージの中核部分)は現場のビジネス連携を意図していない。つまり、ベルトコンベアで背品を組立てる製造ビジネス用のソフトウエアだ。
 顧客志向の製造ビジネスには、個別受注生産や多品種少量生産を支える製番管理方式の部品供給計画が必要不可欠だ。量産したい場合どうすればよいだろうか? 共通部品の類はMRPシステムに内蔵されているタイムバケット方式で供給計画を策定すれば十分だ。
 「ソフトウエア・パッケージに合わせて業務を改革する」のは愚の骨頂だ。
 「かんばん」が有効に作用するのは「3ヶ月資材調達計画が届くTier3までの話だ。現在の工業製品は高度化し、複雑化している。つまり兵站線が間延びしている。悪意ある企業や国家が間隙を突けば、容易に製品メーカを揺さぶることができる。米中経済戦争は規格化されたモジュール供給に関する争いだ。
 C. Fineが言うサプライチェーン・デザインを実現・操作する道具として資材供給計画を見直していただきたい。日本企業が得意とする「仕様未定段階での見込み先行手配」(対応する英語がない)もその中に含めておこう。

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第10回 第4部 事例 生産情報システムの簡素化
       4.2 働く人々の同期連携を計画する

製造ビジネスでは「ものづくり」のための設備・機械や技術・技能者が必須だ。エネルギーや工業用水、副資材などの供給も考慮していわゆる「生産資源」を用意する必要がある。
生産資源を用意するにはお金がかかる。用意した人や機械を上手の活用することが肝要だ。つまり、ムリ・ムラ・ムダの少ない働き方を計画する必要がある。働く人たちや機械類は「仕事が来る」のを待っている。その計画が「生産スケジュール」だ。その巧拙によって収益は大幅に左右される。
しかし、ものづくりの現場でスケジュール通りに働くことは至難だ。スケジューリング段階で設備故障や作業ミスを計画することはできない。注文もスケジュール通りに来る保証はない。人手が足りなければ残業や応援求めればよいし、少し先であれば、機械をかりるとか購入することも可能だ。スケジューリングの前提条件は揺れ動いている。
 そのような状況でも、お客様の要望を満たす時期(納期?)までに製品を完成させなければならない。その為には、混み具合や生産資源の状況に応じて生産スケジュールを策定する必要がある。
 スケジュール通りには働けないなら、「スケジュールより上手に働く」ことができるよう、若干の余裕を持ったスケジュールを策定しよう。無理な納期で注文を獲ると、他のお客様に迷惑が掛かり、最終的には企業が疲弊する。
 生産スケジューリングに関する期待を改革しよう。生産スケジューリングを「好ましい近未来を招き寄せる」ために利用しよう。
その中に「仕様未定での先行手配」ができるようしておくなら、納期短縮ができ、優位性を保つことができる。

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第9回 第4部 事例 生産情報システムの簡素化

       4.1 異なる職場で働く人々のビジネス連携を図る

「かんばん」は「ものづくり」の現場で働く人々の同期連携を図る方策の一つだ。しかし、独り歩きする幼児に似ている。発行すると、何か起きたとき、止められない。しかも、供給責任を背負っているので、働く人々にムリ・ムラ・無駄を強いる。
「かんばん」の目的に立ち返ると、働く人々の自律・協調・分散を可能にする簡易な方策がある。最終製品メーカの生産スケジュールをサプライヤ(自社工場を含む)に開示しよう。
生産進捗もスケジュールに上書きして開示しよう。スケジュール通りに作業が進行することは滅多にないので、若干の時間的余裕(Time Fence)を持たせて作業着手権限を与えることにしよう。そうすれば、「かんばん」なしの同期生産は容易だ。
ある期間(生産タイムフェンス)内の引取責任を確約すれば、発注指示や納入指示は不要だ。生産スケジューリングの意味を見直すほうがよい。スケジュール通りに生産活動できるほど現在の製造ビジネスは甘くない。刻々と変化する事態に合わせて素早く再スケジューリングすることが肝要だ。それは経営を支える「そろばん」に相当する。

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第8回  第3部 ITをビジネスに活用する技術
    3.4 IT以前の課題「働く人の心を繋ぐ」

「かんばん」は「ものづくり」の現場で働く人々の同期連携を図る方策の一つだ。しかし、独り歩きする幼児に似ている。発行すると、何か起きたとき、止められない。しかも、供給責任を背負っているので、働く人々にムリ・ムラ・無駄を強いる。
「かんばん」の目的に立ち返ると、働く人々の自律・協調・分散を可能にする簡易な方策がある。最終製品メーカの生産スケジュールをサプライヤ(自社工場を含む)に開示しよう。
生産進捗もスケジュールに上書きして開示しよう。スケジュール通りに作業が進行することは滅多にないので、若干の時間的余裕(Time Fence)を持たせて作業着手権限を与えることにしよう。そうすれば、「かんばん」なしの同期生産は容易だ。
ある期間(生産タイムフェンス)内の引取責任を確約すれば、発注指示や納入指示は不要だ。生産スケジューリングの意味を見直すほうがよい。スケジュール通りに生産活動できるほど現在の製造ビジネスは甘くない。刻々と変化する事態に合わせて素早く再スケジューリングすることが肝要だ。それは経営を支える「そろばん」に相当する。

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